「自律型人財が育つコーチングとは? 〜ありがちな誤解~」
コーチングとは
「コーチ(Coach)」とはもともと「馬車」の意です。そこから「大切な人をその人が望むところまで送り届ける」という意味で使われるようになりました。したがって、アスリートのコーチは、選手のポテンシャルを最大限に引き出し、心から望む目標に到達するのを支援します。同様に職場でのコーチングは、社員のポテンシャルを十二分に引き出し、本人が「心から望む答」やありたい姿の明確化、その実現をサポートします。
コーチングが機能する仕組み
なぜ対話で、そのようなことが実現できるのでしょうか。このような経験はありませんか。一人で考えているときはモヤモヤして先が見えなかったのに、誰かがじっくり話を聴いてくれたので、「我ながら頭が整理されてきたな」という経験です。自分の声を自らの耳で聴くことで考えが整理されていく働きを「オートクライン」と言います。
そして質問され、それについてさらに気持ちよく話していると「ああ、本当はこういうことを望んでいた、こうしたい!」など自分の想いに気付いた経験も。これがコーチングの「気付き」です。自分で気付いたことは自らやってみたい。素晴らしい結果が出れば嬉しいし、仮に不本意な結果でも自ら選択したことは納得がいく。もっと改善してみよう!と意欲も湧いてきます。それはまさに自律型人材の思考・行動パターンです。人材育成にコーチングが良いと言われる所以です。
コーチングにありがちな誤解
ところで、コーチングに関するありがちな誤解に次のようなものがあります。これらに陥るとコーチングは正しく機能しません。
<誤解①>
部下に、上司が言わせたい“正解”を気づかせようと誘導尋問する
例「こう考えると当然こういう流れになるよね?ということは?言ってごらん?」
(部下の気持ち:面倒だ、正解があるなら自分で言ってよ…)
<誤解②>
上司が問題を解決しようと、情報収集や仮説検証の質問をする
例「この件は調べた?結局こういうことが問題じゃないの?」
(部下の気持ち:尋問されているような気分…(当事者意識も薄れる))
<誤解③>
部下に目前の課題の解決策を出させようと、アクションプランの質問ばかりする
例「じゃあ、どうすればいいと思う?」
(部下の気持ち:それが分からないから相談しているんですけど…)
<誤解④>
原因追求型の質問で追い詰めてしまう
例「なぜ気をつけなかったの?なぜ改善しないの?」
(部下の気持ち:すみません、しか言えない…)
コーチングに相応しいテーマ(話題)とは
本人が「心から望む答え」に気づくことで主体的にありたい姿に向かって行動し、実現することをサポートするのがコーチングです。つまり「重要だが緊急ではない事柄」について話題にし、「本人にとって価値・魅力のある答え(want to be)」を見つける関わりです。
誤解①〜④はどれも「重要かつ緊急」または「 “正解”やあるべき姿(should be)がある事柄」について扱っているため、コーチングを使う場面ではなかったのです。
コーチングには、「そもそもどんな想いで今の仕事に?本当はどうなりたい?」など、価値観の違いを尊重し、即答を求めない対話、勇気づけの姿勢が不可欠です。
【関連情報】
●書籍:「実践!1on1ミーティング」
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