責める「原因論」から、活かす「目的論」的アプローチへ
「原因論」的アプローチ
上司とメンバー(営業パーソン)が、次のような会話をしています。
上司 :本田さん、目標への進捗はどうなってる?
メンバー:申し訳ありません、予定よりも20%遅れています。
上司 :なぜ遅れているの?
メンバー:…十分な件数の電話ができていないからだと思います。
上司 :なぜできていないの?
メンバー:時間がなくて…
上司 :なぜ本田さんだけ時間がないの?
メンバー:…私の仕事のやり方がまずいんでしょうか…
上司 :それが分かっているならなぜ改善しないの?
メンバー:…申し訳ありません
上司 :で、どうするの?
メンバー:頑張ります…
いかがでしょうか。このようなコミュニケーションで、メンバーは本当に頑張れるでしょうか。このように、なぜなぜと原因を追求していく問答を多くの場面で目にします。これは「過去の出来事が、現在の状況を作っている」というフロイトの心理学「原因論」的アプローチといえます。
「目的論」的アプローチ
一方、次のような会話はいかがでしょうか。
上司 :本田さん、目標への進捗はどうなってる?
メンバー:申し訳ありません、予定よりも20%遅れています。
上司 :そうなんだね。じゃあ来月末には、理想的にはどうなっていたら良さそう?
メンバー:来月末…。そうですね、期末まであと3ヶ月ですから、10%遅れぐらいまではキャッチアップ出来た方がいいと思います。
上司 :いいね。そこを目指すとき、すでにできていることは何だろう?
メンバー:できていること…電話はこれからですが、リストはできました。
上司 :OK。では、何から始めたい?
メンバー:少しでも確率の高いところから電話をかけ始めたいです。
上司 :ぜひやってくれる?
メンバー:はい!
いかがでしょうか。先ほどの例と違って、メンバーが自発的になっています。このようなコミュニケーションは、あまり多くは目にしないかもしれません。これは「人は目的があって、今の状況を作り出している」というアドラーの心理学「目的論」的アプローチといえます。
人に対しては、責める「原因論」から、活かす「目的論」的アプローチへ
ここまでお読みいただくと「原因論は良くなく、目的論が良い」と見えるかもしれません。
しかし、有名なトヨタ生産方式の1つに「5回のなぜを繰り返す」というものがあります。
生産ラインが止まった。なぜ? →ユニットAが故障したから。
なぜユニットAが故障したか? →センサー異常が起きていた。
なぜセンサー異常が起きたか? →調べたら、異物が混入していた。
なぜ異物が混入したか? →実は機械のこのすき間に、隣の工程で生じる微細な物質が入り込んでいた。
なぜを繰り返すことで真因が特定でき、「機械のすき間と工程間に関して、万全の調整をする」という解決策を導き出すことができます。つまり、「モノ」に関しては原因論的アプローチが有効だと言えるのです。
一方、「ヒト」に対して原因論的アプローチを使うと、前述の通り責められるような印象になります。つまり、使い分けが大事なのです。
ヒトには「どうなったら嬉しい?」「どんな自分になりたい?」「できていることは?」という「目的論」的アプローチで勇気づけてまいりましょう。